第3章 後編
「はは、褒め言葉として受け取っておくよ」
アーデンはワイングラスを揺らしながら、乾いた笑みを浮かべるしかなかった。
実際は元王族の人間なのだか、その事実を知っているのはごく少数の人間であり、自ら話そうとも思っていなかった。
王女からの賛辞は、明らかな好意が混ざっており、アーデンは珍しく頭を悩ませていた。
「…そうだ、帝国のお話、聞いてみたいですわ。あの国は閉ざされているから、旅人の口伝えでしか知ることができなくて」
王女は場の空気を感じ取り話題を変えた。
しかも、相手が不快にならず、かつ、話しやすそうな話題を。
そんな二人をユーリは静かに見守っていた。
――アーデンは国王になりたかったのかな
ユーリは二人を見ていると、ふとそんな考えが浮かんだ。
2000年前、国王になれるはずだったが、神々の気まぐれで叶わなかった。
本人から国王になりたかったと聞いたことはないが、あの日、彼は罠だと分かっていても選定の場に戻った。
少なくとも、民が望むなら国王になろう、そう思っていたのかもしれない。
ユーリが物思いに耽っていると、給仕がスープを運んできた。かぼちゃのポタージュ、湯気がゆるやかに立ち上っていた。