第3章 後編
アーデンはユーリから視線を外し、窓から外を眺めていた。
窓の外では空が茜から紫へと移り変わりつつある。
そして二人は何とも言えない雰囲気のまま馬車へ乗り込み、城門をくぐり抜けた。
そこは手入れの行き届いた庭園が広がっており、魔導灯が柔らかな光を放ち、噴水の水面に金と白の光が輝いていた。
東棟の入り口で馬車が止まり、使用人に案内されて廊下を進むと、扉の向こうから銀食器の触れ合う微かな音と楽の調べが漏れていた。
扉が開かれると、晩餐室はこぢんまりとした部屋だったが、私的という割には十分すぎるほど豪華だった。
壁には花が飾られ、燭台には炎ではなく魔法の灯火。
テーブルには三人分の席が用意されていた。
その中でも一際豪華な椅子にレティシアが座っていた。
昨日の白いドレスとは打って変わり、淡い青のイブニングドレスに着替えている。
首元には小ぶりだが上等なサファイアのネックレス。
髪も結い上げており、昼の少女らしさとは違う、王族としての品格が前面に出ていた。
「ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりましたわ」
王女の顔がぱあっと明るくなったのは、明らかにアーデンを見た瞬間だった。
レティシアは自ら二人の席まで歩み寄り、椅子を引いた。上座にアーデン、その隣にユーリ。レティシア自身はテーブルの反対側、つまりアーデンとは斜向かいという配置だった。
近すぎず、しかし視線は常に届く距離である。
「お口に合うかわかりませんけれど、料理長に腕を振るわせましたの」
二人が席についてそう時間が経たない内に、前菜が運ばれてきた。
魚介のテリーヌに蕪のピュレ、金箔が散らされている。
ワインは王領の畑で採れたという白が注がれた。
アーデンは礼を述べて一口食べると、素直に美味しいと伝えた。
帝国とはまた違う味に、少しだけ興味関心をもったようだった。
王女はアーデン言葉に笑みを浮かべると、彼の佇まいや気品の良さを褒めた。
まるで王族と言われても違和感のない所作に、王女は目を離せないでいた。