第2章 中編
「彼女を今すぐ開放しろ…」
アーデンの周りに黒い粒子が流れ始める。
彼の憎しみと怒りの感情は、いとも簡単にクリスタルから闇の力を取り込んでいく。
ーーーー愚かな
アーデンの異変にアルテマは呆れた声を出すと、手を振りかざしアーデンへと攻撃を仕掛けようとした。
「…そこまでです。もう止めなさい」
両者の力が衝突しようとした瞬間、冷えた声が辺りに響いた。
視線を向けれるとそこにいたのは、氷神のゲンティアナ。
ここにいるはずのない存在に拍子抜かれ、思わず互いに力を解除する。
そんな両者にゲンティアナは軽くため息を吐くと、徐にアーデンの方へと足を向ける。
そんな彼女の行動を黙って見ていたアーデンだが、手元の剣先を彼女の喉元へと突きつける。
だがそれも彼女が振れただけで、粉々に砕け散ってしまった。
「……彼女に会いたいですか」
武器を失ってもなお、敵意をむき出しているアーデンに放たれたその言葉。
「……あなたの魂は既に、彼女が向かった対をなす世界に囚われたままです。あなたが望むのなら、そこへ行くことができるでしょう」
ゲンティアナはそういうと、手を振りかざし指輪を召喚した。
その指輪は現世での王の指輪であり、アーデンの手元へと静かに落ちていく。
「……どういうつもりだ?」
六神など端から信じていない。だからそんな彼女の行動を不審に思っても仕方ないことだろう。
「私はずっと、2千年前からあなた達を見てきました。あなたが闇の王を選んだ時は一度見限りましたが、もし本当に彼女を救いたいと思うのであれば、試してみなさい。保障など何もないですが、それでも構わないなら協力しましょう」
「…オレは神様が大嫌いなんだよね。なんで従わないといけないわけ?」
「従うも従わないものあなたの勝手です。だけど彼女は今、たった一人でこの星の闇と戦っているんですよ」
その言葉に、思わずアーデンは眉を潜め舌打ちをする。
もとより他に方法が思いつかないので、彼女の言葉を信じるしかない。
アーデンは忌々しげに彼らを睨みつけると、背を向けてクリスタルへと向かう。
指輪をはめれば一瞬でその姿を消したアーデン。
再びこの場は静寂に包まれた。