第10章 其の十
「そろそろ主と話ができるだろうか?」
三日月の言葉に、加州もしばし考えてから審神者部屋へ向かう事にする。
広間の横を通過すると、仲から粟田口兄弟たちの声が聞こえ、風呂場に続く廊下を過ぎれば今剣と小夜が駆け回っているのが見えた。
「ずいぶんと賑やかだな」
「まぁね。主もその方が楽しいって」
「ほぅ……賑やかなのが好きなのか」
「寂しいのが嫌いなんだって」
そんな話をしながら、審神者部屋への階段を上がる。
「主~、入るよ~」
いつもと同じように声を掛ける加州を見て一瞬驚いた表情を見せた三日月であったが、クスッと笑い加州の後について部屋に入った。
手前の執務机に桜華の姿がないのを確認すれば、まだ眠っているのだろうと奥の寝室を覗き込む加州。
「まだ寝てるみたい」
「では、少し待たせてもらうとしよう」
卓袱台に置かれた茶菓子を見て、三日月はそこへ座り、加州もつられてお茶を用意してから彼の向かいに座った。
桜華が目覚めるまでの間、他愛ない話をしている最中に、何度も色んな男士達が訪れたのを見て、三日月は彼女が愛されていることを知るのであった。