第9章 其の九
「加州様!」
やっと見つけた加州を引きつれて桜華は顕現部屋に向かう。
「ちょっと主、そんなに急いで何なの?」
「いいからお付き合いください」
「お付き合いはいくらでもするけど、そんなに引っ張らなくても逃げないってば」
加州と共に顕現部屋に入った桜華。来る途中、顕現を今すぐするからと叫んでいたのでてっきり準備が整っているのかと思えば、顕現部屋には何もなく……。
「主、鍛刀したんじゃないの?」
顕現には必須である肝心の刀剣がない。漆黒の刀台には何も乗せられていないのだった。
「あっ……」
鍛刀部屋から刀剣を持ってくることを忘れていたらしい桜華にため息をつきながらも、加州は持ってくるから待っているように告げる。
いつになくそわそわしている桜華は、加州が戻ってくるまでの間に顕現の準備を整えた。
鍛刀部屋には、キラキラと輝く刀が一振り出来上がっていた。
ズシリとかかるその重みに加州も驚く。
太刀もしくは大太刀でも来るだろうか?
今現在、この本丸には太刀は一振り、燭台切のみだ。これが大物であればかなりの戦力になるだろう。
慎重にそれを運び込んだ顕現部屋は、先ほど自分が出て行った場所とは違うのではないかと思うほどに桜華の霊力に満ち溢れていた。
「ありがとうございます」
桜華に言われて刀台にそれを置く。
「外で待ってるね」
新たな刀剣に視線を集中させている桜華に加州はそう告げると廊下に侍り顕現が終わるのを待った。