第7章 其の七
「やっぱり、少しお休みにしましょう」
「お休みですか?」
資材は足りないものの、出陣しなければ怪我を負う者もない、数多く鍛刀をしなければ大幅に資材が減ることもない、そうすれば少しの間皆で休息をとるという事も不可能ではないと考えたのだ。
歴史遡行軍が出なければの話ではあるが……。そこは運を天に任せようと言う話。
「長谷部様も少しお休みしてください」
笑顔を向ける桜華の瞳に吸い込まれそうになる。
思わず惚けてしまった長谷部に首を傾げた桜華の頬へそっと手を添えた彼は、そのまま彼女の唇を指でなぞった。
「長谷部様?」
桜華の声に我に返った長谷部は自分の手を引っ込めると、コホンっと咳払いをする。
「すみませんでした」
そう呟いた長谷部に対し、桜華は彼の前へそっと近づき小さな手を彼の両頬を包み込むように添えると、チュッとかわいらしい音を立てて唇を重ねた。
突然の出来事に身を固めた長谷部は混乱の表情を浮かべている。
「……」
「長谷部様にはいつも苦労を掛けてしまっていますので……そのっ……私の霊力で少しでもお力になれればと……」
自分からキスをしたのは初めてだった桜華もまた、恥ずかしさに顔を赤く染めてその場で俯いた。
「主…」
呼ぶと同時に桜華の身体を自分の方へ引き寄せた長谷部は、彼女の身体をそと撫でながら桜華の顔を自分の方へ上げる。
そして、軽く微笑むと今度は長谷部の方から唇を奪った。
何度か角度を変えて重ねられた唇はうっすらと熱を帯び赤みを増す。
「はせっ……んっ…」
名前を呼ぼうとして開かれた唇はあっという間に長谷部に絡めとられ口内へ舌が入り込んだ。クチュクチュと音を響かせながら何かが切れたように彼女を貪る。
ギュッと掴まれた肩にハッとした長谷部はゆっくりと唇を離した。
「主……そのような顔をされては、俺とて我慢が出来ません」