第7章 其の七
あれから刀剣男士達は徐々に増えていき20振りを超えた。
統率を図るため近侍という職が定められるようになり、今日の近侍は加州清光である。
桜華は、刀剣男士達と仲良くなるべく尽力していた。刀もとい人と接する事に対する恥ずかしさもだいぶ減り、本丸での生活にも慣れた。そして、最近の読み物はもっぱら刀剣図鑑である。
加州の膝の間に座り抱っこをしてもらう形で本を読む桜華。加州も嬉しそうな顔をして彼女を抱きかかえている。
「加州様は新選組のお刀なのですね」
「そうね。俺は沖田総司の刀だったんだけど」
「沖田総司と言えば美男子と聞きます。加州様の様に素敵な方だったのでしょうね」
そんな会話を交えながら真剣に図鑑を読む彼女を他所に、素敵と言われたことにデレっとしている加州は近侍の仕事とは……と言う事はすっかり忘れているようである。
「あら、沖田さまのお刀はもう一振りあるのですか?」
桜華は大和守安定のページを見開くと加州に尋ねた。
加州が大和守について桜華に説明を始めると間もなく審神者部屋に長谷部がやって来る。彼は小脇に桜華の洗濯物を抱え、加州と桜華の姿を見ると大きく肩を落とした。
「主、遊んでばかりいてはいけません」
「勉強ですよ」
最近の桜華は、短刀が増えたせいか遊びを好むようになり、前々から彼女を甘やかしている加州や歌仙を始め、山姥切や鳴狐、蜻蛉切がこっそりそれに加勢しているらしく、仕事の進みがあまり良くないのが事実である。
『お世話係り』と銘打った職務を遂行している長谷部は近侍とはまた別で審神者の仕事を補佐し本丸の統率に尽力を注いでいた。
加州が近侍では仕事が進まないとお世話日記に書き記すのは何度目だろうかと考えながら、箪笥に衣類を片づける。
主ときちんと話し合わねばらないなと思いつつも、少しばかり加州が羨ましく思ってしまう。
「主、間もなく遠征部隊が帰還しますよ」
長谷部の言葉に時計を見やった桜華は、加州の膝から立ち上がると遠征部隊を迎えるために門前へ向かった。