第4章 守りたいもの 前編 (光秀×舞)
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翌日
舞は小さな風呂敷包みを1つ抱えて御殿へとやってきた
「舞様、お待ちしておりました。さぁどうぞ、中へ」
「はい!暫く、お世話になります。早く光秀さんが良くなるように、精一杯頑張りますね」
「ええ。光秀様をお願い致します。光秀様は放っておくとすぐに無理をなさるので、舞様が見ていて下さると安心です」
「いえ、元はと言えば私の所為で怪我をしてしまったので…こうやって近くで支えられる事が嬉しいです。信長様にお願いして、本当に良かったです」
「信長様にお願いを?」
「はい。九兵衛さんに送って頂いた後、信長様に直訴したんです。光秀さんが良くなるまで光秀さんの御殿へ通わせて下さいって。まさか、御殿に住まわせて貰えるまでは思ってなかったですけどね」
ふふっと微笑みながら語る舞を見ながら、九兵衛はそこまで光秀の事を大切に想う舞の姿に胸が熱くなった
「舞様は、光秀様がお好きなのですね」
「えっ、いや、そういう事じゃなくて…っ!」
顔を真っ赤にしながら否定する舞だが、その表情は焦っているのがわかり、九兵衛はそれ以上の追求はせず、用意した舞の部屋へ案内した
「今日からこちらをお使いください。光秀様のお部屋は、ここから真っ直ぐ行って突き当たりの部屋です」
「はい。有難うございます!先ずは挨拶に行ってきます」
荷物を降ろし嬉しそうに走っていく舞の後ろ姿を見送りながら、九兵衛は、光秀が舞を放っておけないのがわかった気がした
キラキラ眩しくて、目が離せないのだ
諜報を仕事にしている我々とは真逆の存在の舞だからこそ、惹かれてしまうのだろう
舞が光秀の傍で、光秀の心の拠り所になってくれればいいと、九兵衛は心から願っていた
「光秀様をお願い致します、舞様」
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