第4章 守りたいもの 前編 (光秀×舞)
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ずっと我慢していたのだろう
舞の瞳から一気に大粒の涙が零れ落ち、光秀の顔を濡らしてゆく
その温かい雫が頬に、瞼に触れる度に、光秀の胸はギュッと締め付けられた
「泣く程の事ではないだろう。そんな顔で泣かれていては、お前を揶揄う事も出来ないだろう?」
クスリと笑いながら右手で舞の涙を拭ってやると、舞は光秀の手をとり、グッと握りしめた
「舞…?」
「もう、こんな無茶はやめて下さい。私の所為で光秀さんがこんな風に怪我するのは耐えられません…っ」
「お前が無事ならいい。お前に何かあれば、信長様に申し訳が立たんからな」
「っ、信長様の為…ですか…?」
「そうだ。他に何がある」
舞が気に病まずに済むように言った言葉だったが、舞は明らかに落胆の表情を浮かべ、ポツリと呟いた
「光秀さんは…私じゃなくても、同じように無茶をしても助けに行くって…わかってます。だけど…私は、嬉しかったんです。光秀さんが、攫われた私を心配して探しに来てくれた事が…」
「舞…」
「秀吉さんから全部聞きました。危険を冒しても私を助けようとしてくれた事、私を庇って怪我をした事、怪我をした体で私を抱えて山を降りてくれた事…。私は光秀さんに迷惑をかけてばっかりですね」
今にも溢れそうな程に涙を溜めた瞳
光秀は体を起こすと、舞の体を抱き寄せた
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