第4章 守りたいもの 前編 (光秀×舞)
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あの夜に意識を失ってから、どれくらい経ったのだろうか
目が覚めた時、俺は自分の御殿の褥の中にいた
「ここは…俺の御殿、か…」
斬られた左肩は発熱し、左の腕は激しく痛み、動かす事もままならない
「やれやれ…これでは暫く使い物にならんな」
だが、このまま寝ている訳にもいかない
その後の首尾など、確認しなければならない事が山ほどある
光秀は体を起こす為、右手を床につこうとした、その時だった
光秀は、右手を握りしめたまま眠る舞の姿を視界に捉え、思わず息を飲んだ
「っ、舞……」
顔の傷はほとんど目立たない程には治っていたが、頬にまだ少し青アザが残っている
家康の薬はよく効くから、時間が経てば治るだろう
だが、心に受けた傷はそう簡単には治せない
光秀は、舞の純粋な心を汚され、踏みにじらた事に怒りを覚えていた
無意識に、繋がれた右手へ力が籠る
それにピクリと反応した舞は慌てて顔を上げ、光秀の顔を覗き込んだ
「光秀さん…っ!!目が覚めたんですね…!」
「ああ…。随分長く眠っていたようだな。お前はいつからそこにいたのだ?」
「私の事はいいんです…!光秀さんが目を覚まさなかったらって…ずっと不安で…っ、よ、かった…っ」
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