第4章 守りたいもの 前編 (光秀×舞)
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九兵衛が御殿を出てから半刻が過ぎた頃
何やら表が慌ただしくなり光秀が様子を見に行くと、九兵衛が青ざめた顔で駆け寄ってきた
「た、大変で御座います!!舞様が…!!」
「舞が…どうしたのだ?!」
「舞様が…何者かに攫われた様です…!!町の者が、黒装束の男達に連れ去られるのを目撃しております」
舞が…攫われた、だと?
一瞬言葉を詰まらせる光秀
だが、瞬時に思考を巡らせ、九兵衛に指示を出した
「お前は直ぐに安土城へ向かい、状況を説明しろ。俺は舞を探しに行く」
「はっ、すぐに知らせて参ります!」
本能寺で信長様を襲った賊が顕如という坊主ではないかという所までは大方調べがついていたが、確信はなく、拠点もいくらかは見当がついているものの、確かな情報はない
ただ、黒装束だったという事は、黒幕は顕如で十中八九間違いはなさそうだ
舞が信長様気に入りの姫だという情報をどこからか入手し、おびき出す餌として利用しようとしている事も想像するに容易かった
「元高僧が、下劣な真似をしてくれるものだ…」
奥歯をギリ…と噛み締めて、光秀は数名の部下と共に見当をつけていた山小屋へと向かっていた
小屋へ近づくにつれ物々しい雰囲気が漂い、黒装束の男達が小屋の周りを囲み、厳重に見張っているのがわかる
攫われた地点から割り出して、恐らく間違いないだろうと踏んでいたが、当たりだったようだ
「光秀様…!遠くから何やら怪しい集団が近付いております。いかがされますか!?」
「そうか。援軍を待っている余裕はないようだな。ならば、お前らは向こうで騒ぎを起こせ。その間に俺が舞を助け出す」
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