第4章 守りたいもの 前編 (光秀×舞)
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信長様を助けたという、舞という名の女が安土城に住むようになってから二月程が過ぎた
最初は、変わった女だと思い気にも止めていなかったが、舞は今まで出会ったどの女よりも純粋で、真っ直ぐで、揶揄えば顔を真っ赤にして反応して…気がつけば、無意識にお前を探している自分がいた。
どんな仕事の後でも、お前の笑顔を見れば心が癒された
お前は俺には眩しすぎるとわかっていても、触れずにはいられない程…淡い想いを抱いていた
「俺には不釣り合いな感情だな…」
信長様に気に入られ、安土城に部屋を貰うほど寵愛されれば、普通の女なら喜び、贅を尽くし、天狗になるものだ
だが舞は、ただじっとしているのは性に合わないといい、手伝いを申し入れ、今では針子の仕事だけでなく織田軍の世話役まで引き受けている
毎日、舞が御殿まで書状を届けてくれるようになり、舞と話す機会が増えるたびに…触れたい衝動を抑えるのが辛いと感じるようになっていた光秀は、思わず深い溜息を漏らした
「どうされました?光秀様」
「九兵衛か…。いや、何でもない。今日は遅いと思っていただけだ」
「ああ、舞様ですか。確かに、いつもならもういらしている時間ですね。少し、近くを見て参りましょう」
「そうか。頼む」
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