第16章 愛する覚悟 (光秀×舞) R18
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向かった先は、秀吉の御殿だった
離れている間に縮まったであろう二人の距離を思うと、胸が酷くざわつく
頭ではわかっている。舞は秀吉と共にいた方が明るく照らされた穏やかな道を歩めるのだと。
ならば、祝福してやるべきだと。
それでも俺は…この想いを手放すという選択肢を選べずにいる
こんな感情はとっくに捨てた、と…思っていたのに。
「俺らしくもないな…」
秀吉の御殿の廊下を歩きながら小さくそう呟くと、二人が居るであろう部屋の戸をスッと開けた
「邪魔をする…っ、秀吉…。何を、やっている…」
「っ、光秀?!」
突然現れた光秀に目を丸くしながら、秀吉は慌てて姿勢を正した
部屋では、秀吉の膝の上で舞が静かな寝息を立てている
その髪を撫でるように置かれた秀吉の手に、光秀は眉間の皺を深くした
「お前、何でここに……」
「舞を迎えに来た。帰ったら苛めてやる約束をしていたのでな」
光秀の言葉に、秀吉もまた眉間の皺を深くする
「光秀、お前…いい加減こいつを苛めるのはやめろ。舞はお前のものじゃないだろ!」
「なら、お前のものだとでも言うつもりか、秀吉?」
「っ、話をすり替えるな!それに、信長様への報告は…」
「信長様への報告なら済ませて来たぞ。因みに…俺がここへ来たのも信長様の命だ」
「な…っ、信長様の命だと?!」
明らかに動揺する秀吉の元へ近寄り、眠ったままの舞を優しく抱き上げる
「お前達の様子を見てこいと言われたが…どうやら見に来て正解だったな。舞は、俺が連れて行く」
「っ、何故、そうなる…!!光秀、いい加減に…」
「俺は本気だ、秀吉。舞をお前に譲る気は毛頭無い。この先もずっと、だ」
「光秀…お前……」
驚きの表情を浮かべる秀吉にフッと口角をつりあげ、無言で踵を返す
背中に突き刺さる冷たい視線を感じながら、光秀は舞を抱え、秀吉の御殿を後にした
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