第16章 愛する覚悟 (光秀×舞) R18
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だが、忘れると誓った想いは、離れていても色褪せる事は無かった
ただ、触れるだけで…意地悪を言った時の舞の困った顔を眺めているだけで、この上なく満たされていたのだと…離れてみて初めて、まざまざと思い知らされる
そうして、ひと月が経つ頃には…胸の内に燻る想いから目を背ける事を諦め、全てを受け入れる覚悟を決めていたのだった
それから暫くして安土城へ戻ってきた光秀は、報告を済ませる為、信長の元を訪れていた
「信長様。謀反は無事、食い止める事が出来ました。とりあえず、引き続きの監視は続けておりますが、暫くは大丈夫かと」
「そうか。光秀、大義であった」
「はっ。それでは私はこれで。御前を失礼致します」
報告を終え、天主を出ようと立ち上がった光秀だったが、信長の声でその場に留まる
「まぁ待て、光秀。貴様に話がある」
「信長様が私に話とは…珍しいですね」
はやる気持ちを悟られまいと、余裕ぶった表情を浮かべ信長の方へと向き直ると、信長は光秀を見つめニヤリと笑みを浮かべた
「秀吉の事だが…あれは放っておくと休みも取らずに働きすぎる」
「まぁ…あの男は休めと言った所で聞かないのは昔からでしょう」
「ふっ、それでだ。最近、秀吉の世話役として舞を秀吉の御殿に行かせたが…案外効果があってな」
「舞を秀吉の御殿に…ですか?」
「ああ。お陰で最近のあやつは、生き生きとしている。ならば、あやつに舞を嫁がせるのも悪くないと思ってな。光秀、貴様はどう思う?」
「……………」
信長の一言に一瞬思考が停止し、言葉を失う
(信長様は何故そのような事を俺に告げるのだ?全て分かった上で仰っているのなら、本当にタチが悪い…)
「それで、舞は何と…?」
「ふっ、気になるか?光秀。ならば自分の耳で確かめてくるがいい」
焦る気持ちを見透かしたような言葉に、拳をグッと握りしめる
光秀は信長に一礼した後、急いでその場から出て行った
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