第16章 愛する覚悟 (光秀×舞) R18
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「久しぶりの安土だな…」
光秀の放った間諜が謀反の疑いのある国を突き止めた事がきっかけで、それを未然に防ぐ為の任務に赴いていた光秀は、久しぶりに踏む安土の地に笑みを浮かべていた
本来であればもっと長くかかるであろう所を、巧みな話術で大名の懐柔に成功し、僅かひと月足らずで帰還した光秀だったが、そのひと月がやけに長く感じられた
(今までは、離れて単独行動していた方が楽だったんだがな…)
ふっ…と、自嘲気味に溜息をつく
安土を離れている間、ずっと気になっていたのはやはり舞の事だった
この任務に赴く前、光秀は舞の部屋に招かれたのだ
その時のやりとりを思い出すだけで自然と胸が温かいもので満たされる
『光秀さん…どうか無事に帰ってきて下さいね。私、光秀さんが帰ってくるの、待ってますから…』
そう言って渡されたお守りを懐から取り出し暫くの間眺めた後、そっとしまい込む
(すっかり絆されたのは俺の方だな……)
本当は、とっくの昔にこの想いを自覚していた
見ないように、気付かないようにしていたのだが、それでも手を伸ばさずにはいられなくて
気付いたら、その場で舞を抱きしめていた
決して口には出さない想いが、少しでもお前に伝わればいいと…そう、思いながら。
『光秀さん、私は……っ』
『くくっ、捨てられた子犬のような顔をしているな。お前はいつも通り、腑抜けた顔で笑っていろ』
『…………っ』
『そのかわり…帰ってきたら、嫌という程苛めてやろう』
口角を吊り上げ、くすりと微笑むと、みるみるうちに舞の顔が真っ赤に染まっていく
『い、意地悪は嫌です…っ。でも…無事を祈りながら、光秀さんの帰りを待ってます』
舞の真っ直ぐな想いに内心戸惑いながら、平静を装い、抱きしめていた腕をそっと降ろす
『…………』
今、返事をしてしまえば引き返せなくなる
だからこそ、敢えて光秀は答えなかった
渡されたお守りを懐にしまい、舞の部屋を出る
安土へ再び戻る頃には、今日の事は一時の気の迷いとして忘れると胸に誓ってーーーー
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