第13章 激情に囚われて(謙信×舞) R18
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(傾国の姫……。そう、なのかもしれない……)
舞は唇を噛みしめながらも、男の言葉に言い返す事は出来なかった
自身が捕まりさえしなければ、こんな事態にはなっていなかっただろう
一緒に花畑へ行く約束をしていたのに、結局迷惑ばかりかけてしまってる
(でも、泣いてる暇なんてない。私にも出来ることがある筈だ。泣くのは全てが終わってからにしよう)
舞は涙を堪え、前を見据えた
(強いな、お前は……)
普通の姫とは違う、舞の凛とした姿に思わず頬が緩む
その姿を美しいと感じてしまうのは、一緒にいた時間が長かったからか、それとも他に理由があるのか。
その答えは出さないまま、気付かないようにそっと胸にしまい込むと、舞の頭をポンと撫でた
「椎名殿、この大戦…勝った暁にはこの女は俺のものにする。事と次第によってはこちらの動き方も変わってくるのを理解した上での異存ならば聞こうか」
「っ、は、はははっ。明智殿はその女に余程ご執心のようですな。私は上杉を討ち滅ぼし家を再興させられるならば、そのような女など必要ないので明智殿の好きになさればよいでしょう」
光秀の言葉に引きつった笑顔を見せながら媚び諂うと、舞の顔をギロリと睨み付けた
「このような女…明智殿には似合いませんよ。是非とも私の娘を明智殿に貰って頂きたいですなぁ」
「ふっ、椎名殿の娘ならば、私よりも秀吉の方が似合いでしょう。生憎、俺は変わった女が好みなものでな。期待には応えられそうにない」
やんわりとかわされ、舞を睨む瞳に憎悪が滲む
怒りに満ちた表情で馬を前に走らせ、男は自軍の隊へと戻って行った
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