第13章 激情に囚われて(謙信×舞) R18
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「天女なら、恐らく大丈夫だ。お前に復讐するのが目的なら、すぐに殺される事はない。逆に、派手に動いて騒ぎにすれば、追い詰められた椎名が舞に危害を加える可能性がある」
「っ、ならばこのまま指をくわえて待っていろというのか?!」
怒りを露わにする謙信に、信玄は首を横に振り否定すると、現時点で分かっている状況を説明した
「三つ者の報告によると、既に椎名はこの春日山から撤退している。潜伏場所は今探らせてるから時期に分かる筈だ。朝にはここを立とう」
「っ、分かり次第報告しろ。朝までなど待てん」
「謙信…。ああ…分かった」
短く返事をすると、信玄はすぐに部屋を出ていった
その頃、舞は薄暗い部屋に閉じ込められていた
身体を拘束され、身動きも取れず眉を寄せる
声を出そうにも、口も塞がれていて叶わない状況だった
(なんで、こんな事に…。今頃、謙信様が心配してるよね…)
何とか逃げ出そうと身動ぎをしていると、部屋の戸が開き、見知った顔と目が合う
(前に、春日山城であった事がある人…だよね)
入ってきた男は、舞の顔を見るなり舌打ちし、浴びせるように暴言を吐いた
「お前がいなければ、上杉が同盟を反故にする事もなかったのだ!どうやって上杉に取り入ったか知らんが、お前のせいで我が椎名家は上杉という後盾を失い、滅ぼされた。絶対に許さんぞ!」
怒気を含んだ声音にビクリと身体が震える
謙信様がどんな理由で同盟を反故にしたのかはわからない
だが、それが要因となり国が滅び、恨みは相当に深いということはすぐに理解出来た
そして、私を人質にして謙信様へ復讐しようとしているのだという事も。
(何とかして逃げないと……)
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