第13章 激情に囚われて(謙信×舞) R18
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「舞が帰ってないだと!?」
日が暮れ始めた頃、仕事を一段絡させ舞の元を訪れた謙信は、舞がまだ戻っていない事に焦りの色を滲ませていた
それは昼餉を終えた後の事。
舞は仕入れてもらった反物を受け取りに城下へ行くと言っていたので、謙信は夕刻までには戻るように伝えていた
「今日は久しぶりに仕事が早く片付きそうだ。どこか行きたい場所があれば連れて行ってやる」
「本当ですか?!じゃあ、久しぶりに花畑に行きたいです!」
嬉しそうに微笑む舞を見つめ、謙信は目を細める
「いいだろう。なら、花畑へ連れて行ってやる」
そう約束していたのに、一向に戻る気配のない舞に、胸騒ぎがして全く落ち着かない
その時、その胸騒ぎを裏付けるように、信玄が深刻な面持ちで足早に近づいて来た
「まずい事になったぞ。天女が城下で攫われた」
「なに!?舞が攫われた…だと!?」
嫌な予感はしていた。
だが、実際に耳にすると、身体中の血が沸騰したように滾り、怒りが込み上げてくる
「詳細は今、三つ者に探らせているが…犯人は恐らく、先日同盟を解消した、あの大名だ」
「椎名か。ろくに武功も上げず、娘との縁談ばかり勧めてきて鬱陶しかったから同盟を反故にしたが…その後すぐに隣国に攻めこまれ滅びたと聞いている」
「ああ。だが、落ち延びて復讐の機会を伺っていたみたいでな。城下に潜伏していた所、舞を見かけたようだ。椎名は舞がお前の大事な姫だと知っている。復讐の道具として利用するつもりだろう」
「っ、下賤が!俺の物に手を出した事、後悔させてやる…!」
姫鶴の柄をギリッと握りしめ、城を出ようとする謙信を慌てて信玄が制止する
「待て!謙信!闇雲に探しても見つからない」
「じっと待つなど出来るものか!舞を傷付ける者は全て斬り捨ててくれる…!」
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