第12章 貴方という存在 (信長×舞) R18 アンケ2位祝SS
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「お待たせ致しました。こちらをお持ち下さい」
綺麗に包まれた包みを受け取り、御礼を言って店を出ると、先程まで雨が降っていたのか地面が濡れていた
「嘘っ、来る時は晴れてたのに…!」
茶菓子をご馳走にならなかったら途中で降られていたと思うと、考えただけでぞっとする
(天気予報とか、あればいいのに…)
舞はハァッと溜息をつくと、大通りをトボトボと歩きはじめた
すると、来た時よりも増えている荷物を、ヒョイっと持ち上げられる
慌てて後ろを振り返ると、琥珀色の瞳と目があった
「み、光秀さん?!」
「大きな荷物を抱えて…夜逃げでもするのか?」
「っ、違います…っ!!」
揶揄うように意地悪を言ってくる光秀に頬を膨らませ反論すると、くつくつと笑い声が降ってくる
「これから安土城へ行く所だったが、思わぬ拾い物をしたお陰で、道中退屈せずにすみそうだ」
荷物を持ったまま隣を並んで歩く光秀を睨みながら、光秀さんは本当に素直じゃないなって思っていた
何を考えているのかわからない冷たい瞳が怖いと思っていた頃もあったが、本当は優しい心を持っている人だとわかり、いつしか怖いと思わなくなっていた
意地悪は相変わらずだけど、私が困っているとこうやって自然に手を貸してくれる
(光秀さんを好きになる人も大変そうだな…)
来る時に思っていたのと同じ事を思って、思わず笑みをこぼした
「思い出し笑いか?イヤらしい事でも考えていたんだろう?」
ニヤリと笑う光秀の言葉に反応して舞が頬を真っ赤に染めると、光秀は少し驚いた表情を浮かべて舞を見つめた
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