第12章 貴方という存在 (信長×舞) R18 アンケ2位祝SS
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暖簾をくぐって中へ入ると、反物屋の主人が出迎えてくれた
「舞様、お待ちしておりました」
「いえ、こちらこそ御依頼有難うございます」
店主に改めて御礼を言うと、物腰が柔らかく品のある主人は、にっこりと笑って反物を舞の前に広げた
「御依頼の品はこちらになります」
「っ、これって……」
舞は目の前に広げられた反物を見て驚きの声をあげた
「これは、南蛮で大変人気があると言う、シルクと呼ばれる反物だそうです。これで婚礼衣装を作って頂きたいと依頼を受け、それならば舞様に是非ともお願いしたいと思いまして」
「婚礼衣装?!そんな大事なものを私なんかが作らせて頂いてもいいんですか?」
うっとりする程美しい光沢を放つ純白の生地で婚礼衣装を作れるのは嬉しいが、一生に一度の大切なものだけに戸惑いがあるのも事実だった
そんな不安を払拭するかのように、店主が言葉を続ける
「先方も、是非舞様にと仰られておりました。御依頼、受けて下さいますか?」
(私を指名してくれたんだ…。なら、絶対後悔させないような素敵な衣装を作ろう…!)
舞は決意を固めると、依頼を受ける旨を店主に伝えた
「素敵な衣装になるように、精一杯頑張ります!」
「有難うございます。それを聞いて安心しました。先方には私から報告しておきます。それから、着られる方は舞様とほぼ変わらない背格好なので、それで作って頂きたいとの事です」
「わかりました。では、この布お預かりしますね」
舞は生地を受け取り、立ち上がる
その時、ハッと思い出し、信長から預かってきた文を懐から取り出し店主に手渡した
「っ、すみません!信長様から文を預かって来たのをすっかり忘れてました」
「信長様から…ですか。拝読致します」
店主は急いで文に目を通すと、懐に文をしまい込んだ
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