第11章 抗えない運命 (家康×舞) R18 アンケ1位祝SS
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その頃、台所では家康がお茶の準備をしていた
(今頃、あんたはみんなに囲まれて笑ってるんだろうな…)
あんたが帰ってきたらこの想いを伝えようと覚悟を決めていたのに、実際その時になるとそんな決意もあっという間に揺らいでしまう
(まだ、今なら引き返せる。俺の想いは、きっとあんたを困らせる。だから…)
お茶を淹れ、立ち上る湯気を眺めながら深呼吸をすると、広間へ戻ろうとお盆を手に取った
その時だった。背中越しに舞の声がして、家康の体はビクリと震えた
「家康?」
「何?お茶なら今持っていくから、あんたは戻っ……っ!」
あんたは戻ってて。そう伝えようとした家康は、舞に後ろから抱きしめられ、言葉を飲み込んだ
「なに、してんの…?」
「家康の背中が…寂しそうだったから…」
「は?何それ…。意味、わかんない…」
振り解こうと思えばいつでも振り解けるのに、背中に感じる温もりを離したくなくて黙り込むと、舞は抱きしめる腕にギュッと力を込めた
「どうして…こっちを見てくれないの…?」
震えた声で紡がれた言葉は、家康の心を激しく揺さぶる
家康は堪らず舞の腕を振り払い、前からギュッと抱きしめた
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