第2章 優しい嘘に御用心? (謙信×舞) R18
.
昨夜の宣言通り、謙信は自ら戦の先陣を切っていた。
総大将自らが先陣に立つ事で上杉軍の士気も上がり、破竹の勢いで敵を圧倒してゆく。
追い詰められた敵軍の将はあっという間に捕らえられ、抵抗を続けていた兵達は一気に総崩れとなり、日が傾く頃には、上杉軍の圧勝で終わっていた。
「謙信様、漸く帰れますね」
いつの間にか近くに来ていた佐助が、安堵の溜息をつく
「ああ…そうだな」
漸く帰れる。お前の元へーーーー
春日山城へ帰城する支度を整え、出発する直前。
何やら考え込んでいた佐助が、こちらを伺いながら、ゆっくりと馬を寄せて来た。
「どうした。何事かあったのか?」
「あの…。実は…謙信様には言わないでくれと言われてた事があるんですが…」
「っ、何?内容次第ではただでは済まさんぞ!」
「ええ。だから、言うか迷っているんです。」
未だに思案している佐助に、言わぬなど赦さんと、刀を向け続きを言うように促す。
ふぅ、と溜息を漏らした佐助は、観念したのか、静かに口を開いた。
「軒猿仲間からの情報ですが…舞さんはここ最近、体調を崩して寝込んでいるようです」
「何…っ、何故黙っていた…!?」
「はい。彼女に一度文を送りましたが、謙信様に心配かけたくないから言わないでくれと頼まれたので、戦が終わるまではと黙っていました。すみません」
「っ、俺は先に春日山城へ戻る。お前は後から隊を連れて帰城しろ。良いな!!」
「…わかりました。けど、彼女を責めないであげて下さい。謙信様を思っての事だったんですから」
「わかっている」
佐助に本隊を預け、謙信は休まず馬を走らせた。
もっと早く舞の体調を知っていれば、このようなつまらん戦など、早々に終わらせてやったものを…。
俺の預かりしらん所で、病に伏せるなど…お前には困ったものだ。
佐助にはわかったと言ったが…やはり、仕置をせねばならんな。
「待っていろ、舞…」
.