第9章 祈りと願いと 後編 (光秀×舞) R18
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「あれは俺の持ち物だ。いくら貴様でも許さん、と言えば何とする」
「舞を手離すという選択肢は存在しませんので、残された答えは1つ…という事になりますね」
一歩も引かない光秀に、信長は鋭い視線を向け刀の塚に手をかける
一気に刀を引き抜くと、光秀の顔の前に突き付けた
「この俺に仇を成すか、光秀」
「お館様が認めて下さらないのであればそれも辞さない覚悟です」
迷いのない力強い言葉に、信長は刀を納め光秀に背を向けた
「俺が天下布武を成し得る為には貴様が必要だ。道半ばで貴様を殺すわけにはいかぬ」
「お館様、それは…」
「俺の手足となり、存分に働くと誓え。そうでなければ許さん」
少し震えた声で放たれた言葉に、信長が辛い決断を下したのだと悟る
この方には一生敵わないと確信すると同時に、どんな苦難が立ちはだかろうともこの方に一生ついて行くと決め頭を下げた
「っ、この光秀、命に代えても違えぬと誓いましょう」
「ならばよし。舞は今、坂本城で待たせておる。すぐに戻ってやれ」
「坂本城に?安土城ではなく、ですか?」
「俺が出陣すると言えば、ついて行くと言って聞かぬのでな。俺の馬に乗せ連れて来た」
信長の腕の中で笑う舞を想像し、再び眉をひそめる光秀を見て、信長はにやりと笑った
「ここはもうよい。三成と家康がいる。貴様はさっさと行け」
「はっ、御前を失礼致します」
光秀は急いで立ち上がると、広間から出て家臣を呼びつけた
「俺は今から急ぎ坂本城へ戻る事になった。お前達は家康に指示を仰ぎ、後から帰城しろ」
「光秀様?!そんなに慌てて、何か大事でも…?!」
「案ずるな。だが、俺にとっては大事ゆえ先に帰城する」
家臣にそれだけ告げると、光秀は坂本城へ向け馬を走らせたのだった
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