第9章 祈りと願いと 後編 (光秀×舞) R18
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程なくして、信長は一乗谷城へと入った
「此度の戦、無事に勝利を収める事が出来たようだな。大儀であった」
広間の上座に座ると、信長はにやりと笑みを浮かべた
「まさか、俺を囮にするとは…相変わらず主君扱いの酷い参謀だな、三成」
「申し訳ございません。ですが、これ以上の策は思いつきませんでしたので」
言葉では謝罪しながら少しも悪びれていない三成に、信長はククッと喉を鳴らした
「まぁよい。上杉に越前を押さえられては厄介だからな。この勝利は大きい」
「はい。義景はまだ捕らえられてませんが、引き続き捜索しています」
「よい。捨て置け。どちらにしろ奴はもう戦えん」
「はっ、では追手を引き上げさせます」
三成と家康は指示を出すべく急いで広間を出ていった
「光秀、先程からずっと押し黙っているが…何か言いたい事があるなら言ってみろ」
先程までの笑みはなく厳しい表情で見つめてくる信長の深紅の瞳を、射るような瞳で見つめ返す光秀
暫くの沈黙の後…光秀は覚悟を決め、口を開いた
「恐れながら申し上げます。お館様は舞をどうしたいと思っていらっしゃるのか、それをお聞かせ頂きたい」
信長は舞の名前に眉をピクリと動かした
表情は崩さず、想いを口にする
「全てを俺の物にしたいと思うくらいには、愛している」
信長の真っ直ぐな想いに、光秀は息を飲んだ
あまりの衝撃に言葉が出てこない
沈黙する光秀を見つめながら、信長はフッと溜息をもらした
「だが、あんな分かりやすい所へ跡をつけて独占欲を露わにされたのでは、手を出す気も失せた」
「っ、お館様…!それは…まさか…っ」
髪を避けねば見えない所につけた所有の証に気付いた事の意味を理解し、光秀の顔に怒りが滲む
その顔を見た信長は笑みを浮かべた
「気が失せたと言っただろう。あれを安土城で預かってから、あれがどれだけ貴様を愛しているのかまざまざと見せつけられた。貴様はどうだ、光秀」
真剣な眼差しで問われ、光秀は真っ直ぐ揺るがない瞳で信長を見ると、決意をはっきりと口にした
「お館様、舞を正室に迎えたいのですが、お許し頂けますか」
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