第9章 祈りと願いと 後編 (光秀×舞) R18
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「まさか、信長様が舞に執着するとは…」
あの方の心は俺にも読めない事が殆どだ
だからこそ、もやもやとした感情が胸の中に渦巻く
「先ずはこの戦を早々に終わらせねばな」
光秀は強い決意を胸に先へと馬を進めた
何とか気付かれずに背後を取った織田軍は、家康が先陣を切り一気に攻め入ると、光秀は鉄砲隊を従え後方から家康を援護する
三成の策は見事に功を奏し、背後から突然急襲された朝倉軍は、指揮系統が乱れ一気に総崩れになった
「家康、義景殿は捕縛できたか?」
「いえ…まだ見つかりません。混乱に乗じて逃れたようです。けど、一乗谷城は上杉軍より先に占拠出来ましたよ」
「はい。光秀様、家康様、この戦…我々織田軍の勝利です。上杉軍が撤退を始めたとの報せが先程入りました」
「信長様が到着される前に撤退を決めたか。あの軍神がすぐに撤退するとは考えられん。とすれば、信玄の助言だろう。だが、賢明な判断だ」
信長様の軍が合流すれば、織田軍は上杉軍の倍以上になる。
我々を押し返し攻めたとしても、戦況は悪化するのが目に見えているからな
「もうすぐ信長様が到着されるそうです。勝利を収め迎える事が出来て本当に良かったですね」
「ああ、そうだな…」
安堵の笑顔を覗かせる三成とは対照的に、光秀の顔はこれから始まる第二の戦を前に険しさを増していた
舞は俺に光を与えてくれたのだ
与えられる幸せを知った今、失う事など考えられない
たとえ相手が信長様であっても
「この戦に勝利し、舞を迎えに行く」
光秀は静かに、そして真っ直ぐに前を見つめていた
瞳に熱い炎を宿しながらーーーーーー
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