第9章 祈りと願いと 後編 (光秀×舞) R18
.
それから暫くして、坂本城へ家康と三成が援軍を率いてやってきた
門を開き2人を迎え入れると、広間へ案内する
家臣達を下がらせ、3人は話を始めた
「わざわざ援軍とは…御苦労な事だな。信長様は何を考えている」
怪訝そうな顔で2人を見つめると、家康は溜息をついた
「どうやら、内乱から逃れてきた人々は光秀さんの所だけでなく、謙信の所へも流れ込んでたみたいですね。越前へ向けて上杉も侵攻を開始したそうです」
「何…?そんな報せは届いてないぞ」
「そうでしょうね。あっちは情報戦には長けてる信玄がいる」
三成が家康の言葉に大きく頷きながら、話を続ける
「我々に悟られないようにして越前を傘下に収めることが出来れば、そのまま安土へ侵攻するのも容易になる…という訳です。先に奪われれば、こちらはかなり不利な状況になります。なので織田軍としては、何としても越前を先に奪取する必要があります」
「だが…三つ巴になると、相手はあの軍神と甲斐の虎。この戦…なかなかに骨が折れそうだ」
光秀は盛大な溜息をついた
「今のところ、戦力はほぼ互角です。油断は出来ませんが、1つ良い策があります」
三成の意味深な発言に、二人は次の言葉を待つ
「先に上杉軍に攻撃させて、交戦している朝倉軍を背後から急襲し、一気に突き崩して制圧する策です」
「成る程…。だが、気付かれずに進軍するのは容易ではないぞ」
「確かに容易くはありませんが、幸いな事に山が多く、気付かれずに近付く事は可能です。後は、信長様に安土から出陣して頂き、朝倉と上杉の争いに気付いた織田軍が慌てて出陣してきたと思わせられれば、上杉軍も織田軍が来る前に終わらせようと必死になるはずです。その隙をついて急襲すれば、敵は総崩れになるかと」
「漁夫の利を狙うのか。では、その策でいこう。俺は今から信長様へ出陣要請の書簡を送る。お前達には部屋を用意するからそこで休んでいろ」
光秀は立ち上がり広間を出ていこうとすると、三成が慌てて呼び止めた
「光秀様、書簡はもう送っているので大丈夫です」
「「は?」」
「これ以上の策は思いつきませんでしたので、勝手ながら私が信長様へ書簡を送らせて頂きました」
にこにこと微笑みながら話す三成に、2人は呆れた表情を浮かべながら溜息をついた
.