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君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】

第8章 滅私奉公


「さぁ、お好きにどうぞ。警察に突き出すのも私を絞めるのも好きにしてください。」

「お、随分と割り切りがいいな。どういう風の吹き回しだぁ?」

「だってこんな重要な写真が見つかってしまったなら私の、負けですから。」

愉快そうに、どうすんだ、糞アマ。と問い掛ける。

彼女は黙っていた。
彼女の今までの行為は許されるもんではない。民事訴訟起こせばこっちが勝てる。
ようやく口にした言葉は思わぬ一言だった。

「…馬鹿だなぁ。あたしはそんな事しないよ。」

「…え?」

愉快な顔をしていたヒル魔も意外な返答に笑顔が消える。

「確かにあんたのした事は到底許されることじゃない。美水女子にいた時は痛くて、悲しくて…辛い日々だった。利き腕じゃないとはいえどあたしの右腕はもう普通の人の腕よりも使えねぇんだ。しかも後輩に罵られるのは堪ったもんじゃねぇ。」

でも、

「あんたの謝るべきなのはあたし以外にもいるだろう。」

その一言に彼女はハッ、となにかに気付いた顔をする。

「100歩譲ってあたしにした事は許せる。ただ今まであんたは色んな人に迷惑かけてきた訳だ。美水女子高校の先生、生徒はあんたの悪行、行為にうんざりしていると思う。そいつらに謝れ。」

「…はい。」

何も言い返さずただ言葉を受け止める。

「…うちの高校にはアメフト部があって、あたしはそのマネージャーをやっている。今、アメフト部は関東大会前で大事な時期なんだ。水泳が出来なくても…あたしにはやる事がある。それを全力でやりたい。だから…泥門高校には近付かないでくれ。」

言いたい事を言い切った。
へたり込んでいる南から背を向けて"行こう。"と言って歩き始めた。
安心感でなのか、彼女が改心して欲しいと願うからなのか…彼女は確かに泣いていた。

少し遅れてヒル魔がケケケ、と笑いながらやってくる。
その声が聞こえて彼女は目元の涙を指先で拭い鞄から棒付きのキャンディを取り出すと舌で飴を転がす。

彼は優しく彼女の頭をわしゃわしゃと撫で回したのだった。
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