君との距離は3yard 【アイシールド21長編R18物語】
第13章 双子
一方の雲水は凄く真面目で大人しかった。
弟が見ての通りの天才ではない最低な奴だったから自分がしっかりしていないといけないと思ったのだろう。
羽目を外しているどころではない。
俺には才能に恵まれていない。
彼はいつも弟と比較され、馬鹿にされてきた。
世間は彼に冷たかった。
ひたすら努力していた。
苦手な所も勉強して克服した。
どうにもならない身体能力も自分を限界まで追い込んで阿含に追い付こうと頑張っていた。
双子なのにどうしてここまで処遇が違うのか?
何故神様は兄ではなく弟を選んだのか?
あたしには分からない。
分からない。
分からない…
本当に
分からないんだ。
…でもよくよく考えてみると性格も能力も瓜二つなんて有り得ない。
それが双子であっても3つ子であっても5つ子であっても。
苦手な所は皆バラバラだし、得意な事だってそれぞれ違う。
そこが見ていて面白いんだ。
…勿論、"無敵な"阿含は例外だけど。
やがて天才は努力を見下し、素行も荒くなって呼び出される事が多くなった。
あたしも時々呼ばれていたが、毎日と言ってもいいぐらい先生から注意されていた。
けど、全然直そうともしなかった。
"100年に1人の天才"モンスターが生まれてしまった。
この悪魔は誰にも止められない。
あたしは「天才な」阿含の気持ちが分からなかった。
一方で「凡人」の雲水の気持ちが良くわかった。
どちらにせよ、どっちの味方につく事も出来ないし、敵になることも出来ない。
板挟みをしていた時もあった。
それでも上手くやっていた。
…でもそれは昔の話。
今は…言わなくても分かるよね。
多分、それはあたしのせいだ。
あたしのせいで、彼らとの関係はぎくしゃくしてしまったんだ。
今は話さない。
きっと向き合う時が来るから。
腑に落ちない部分もあるかもしれないけどこの話はひとまずこれで終わり。
ちょっとした自分と双子の昔話。