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短編集【ONE PIECE】

第2章 艶羨は白煙の中に


俺は今、xxxxに逆らえない。

昨晩、俺は覚えていないのだが、酔った勢いで、彼女と寝てしまった…らしい。
重要人護送任務中に当の本人に手を出したなど、知れれば俺の立場や軍の士気に関わる問題だ。
まして上司やたしぎに何と言われるだろう。

もちろん、xxxxの虚言である可能性もあった。
曲者と称されるxxxxのことだ、事を有利に運ぶため罠を仕掛けられたと考えた方がしっくりくる。
七武海に参画するとはいえ、船長のためになら命も投げ出す龍騎士、色仕掛けくらい簡単にやるだろう。

しかし、xxxxの身体にある複数の痕は確実にキスマークであったし、できたばかりの新しいものだった。
唯一の証拠だ。
何とかして最悪の事態を回避できないかと、あらゆる可能性を洗い出し、状況を整理した。

まず、xxxxがこの船で他の男と関係したケースだが、それは考えられない。
なぜなら、仮に部下の誰かがxxxxと寝たとして、そんなビッグイベントを黙って自慢せずにいられるような連中じゃない。

次に、キスマークが俺の付けたものだとしても(この時点でアウトな気もするが…)、俺には事に及んだ証拠はない。
しかし、やっていないという証拠もない…。
泥酔した日は必ずと言っていいほど寝落ちし、記憶を亡くすことも多い。
しかも今回は運悪く、断片的な記憶はあるのだ。
xxxxを膝に乗せた感触、ベルベットのように滑らかな肌、甘い声、潤んだ瞳…
思い出すだけで身体が熱くなる己の不甲斐なさを呪った。

よって、関係を持った可能性はかなり高い…ということまでは言えるだろう。
そう結論づけられる以上、xxxxの要望には大人しく従うしかなかった。


俺がここまで悩み考えていることまで、全てを想定し見抜いた上での戦略だったとしたら、してやられたとしか言えない。
悔しいが、まんまと落とされた俺が馬鹿だったのだ。

どうせやってしまったのなら、その甘美な一夜をなぜ覚えていないのだろう。
誰もが手に入れたいと願った舞台女優は、海賊となった今もその人気は変わらない。
千金も万金も霞んでしまうような、誰もが見たがった姿、表情、声を一晩独り占めにした記憶を、酒のせいで手放したというのか?

そんな思いが頭をよぎってしまう情けない自分に、ことさら嫌気が刺すのだった。

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