第4章 移り香と遠き星※
俺はらしくない思考を巡らせる。
xxxxを手に入れたい男はそこら中にいるだろう。
思慮の浅いごろつきなどは、無理矢理にでも寝ることさえできれば満足かもしれないが、より権力のある男、野心の強い男であればあるほど、xxxxの身も心も、全てを欲しがるだろう。
その誰もが、xxxxの心は誰の手にも届かない遠い場所にあって、辿り着く術もわからないことを思い知る。
…この俺のように。
共に過ごす中で感じてきた違和感。
それは、xxxxの掴みどころのない物言いや態度のせいではなかった。
俺は今、他の誰よりも近い場所にいるというのに、xxxxの本心は果てしなく遠い場所にあるように感じていた。
触れることの叶わない、夜空に浮かぶ星に手を伸ばすような感覚を。
いつからか抱き始めていたxxxxへの想い。
俺は、その心に触れることができるだろうか。
俺は手際よく治療を済ませ、部屋を後にした。
窓の外は日が暮れて、夕闇が広まりつつある。
瞬き始めた星に、せめて安物の香水の匂いを、消毒液がかき消してくれているようにと願った。