第4章 平和の象徴オリジン【学生時代オールマイト/裏】
『……俊典くんっ、会いたいな…』
酸素マスク越しにか細い声でつぶやき、大きな窓に映る空を見た
もう起き上がることもできない
寝たきりの状態
会いたいけどこんな姿を見られたくない
心の中に生まれる矛盾にヤキモキする
俊典くんと結婚して、子供を産んで、俊典くんの帰りを暖かい食事を作って待つ…
私の些細な夢は、夢のまま消えていく
『嫌だっ…私、このままなんて嫌だっ……!』
流れる涙を手で一生懸命拭う
誰かが私の肩に手を置いた
俊典「…もう大丈夫、私が来た!」
『俊典くんっ…』
私が手を伸ばすと昔より逞しくなった俊典くんの手が私の手を包む
俊典「ごめんね、今まで会いに行けなくて…辛かっただろう
君を敵から守ることはできても、私は君を救う事は出来ないっ…すまないっ!楓!!」
『…救えないなんて、言わないでよ
私は俊典くんにずっと…救われてきたよ?
テレビでずっと活躍見てた……
あなたが頑張ってたから私生きてこれた
…俊典くん、私あなたと……生きたい」
俊典くんはただただすまないと言って私の頬を涙で濡らす
私の涙は目尻から耳の方へとこぼれ落ちる
俊典くんはポケットの中から箱を取り出し、私に開けて見せた
その箱の中には結婚指輪があった
俊典「…遅くなってゴメンね、やっぱりこういうものは大事だからさ
良いものを選びたくて…」
照れ臭そうに笑った後指輪を私の左手薬指にはめた
『………綺麗、あり…がとう…俊典く…』
私はそのまま意識を手放した
俊典「楓!?……楓!目を、開けてくれっ…楓」
楓を抱きしめながら涙を流す俊典
心電図は0になりピーーという耳に残る音を出していた
END