第29章 敵は味方のふりをして近づいてくる【義爛/シリアス】
義爛はアタッシュケースを持ったまま真っ直ぐ歩いてメイキングとの間合いを詰める。
メイキングは弾が尽きるまで義爛に発砲し続けるも全部アタッシュケースに弾かれた。
「ゔぉごぉお!」
「それと…お前仮にもヒーローだろ?だったら死ねは言うなよ。
もっと言葉選びやがれ」
そう言うと同時に義爛はアタッシュケースでメイキングの顔面を殴って気絶させた。
『義爛…どうして』
「助けいくって言っただろ。約束守っただけだから気にするな。」
『……ありがとう』
義爛は、空のアタッシュケースを広げてメイキングの部屋の金庫を開けた。
金庫の中にある大金をアタッシュケースに詰める。
「しかし溜め込んでるなこいつ!これなら3分の1は返せそうだ」
そう言いつつも部屋の中にある物で金目になりそうなものも容赦なく次々とアタッシュケースの中に放り込んでいく。
『…ボディーガードの仕事無くなったし、これからどうしようかな…』
「ボディーガードやる前はヴィジランテだったんだろ?
ヴィジランテに戻ればいいだけの話だ」
『そりゃそうかもしれないけど』
「いいか、楓。自分にとって本当の敵は味方のふりをして近づいてくる…今回のこいつみたいにな。
俺はこいつの化けた俺みたいにあんたに仕事紹介したりはしねぇ…あんたにはまだやらなきゃいけない事があるから今俺の紹介は必要ねぇ。
でも、困ってる時は今回みたいに助けてやる。
あんたはヴィジランテを続けろ、ヴィジランテやるのに必要な武器や装備は俺が揃えてやるから」
そう言って私の頭を撫でてくれる義爛の手は、とても強くて優しい手だった。
『うん…ありがとう、でもなんで私にそこまでしてくれるの?』
「あんたを気に入ったからだよ、俺は気に入った相手としか商売しねぇ。楓になら俺の扱ってる商品託してもいいと思ったからだ…これからも贔屓にしてくれ」
『へへ…こちらこそよろしく、義爛』
私は義爛と握手をした。
友情とも恋愛とも違う…信愛の握手。
敵は味方のふりをして近づいてくる、だからこそ自分の芯を持って人は自立して生きていかなきゃならない。
でも、1人じゃない
困った時には助けてくれる人が、私にはいる。
私は非合法であってもヒーローである自分を諦めない道を選び、また歩み始めた。
END