第21章 もしも願いが叶うなら…【轟焦凍/切甘裏夢】
緑谷から聞いた話によると楓の車が交差点の赤信号で止まっている時に後ろから来た車が猛スピードで突っ込んできたらしい。
それをパトロール中の緑谷が見つけて楓と後ろから突っ込んできたドライバーの応急処置をして救急車を呼んで病院に運ばれた時にはもう楓は息を引き取っていたという…遺体の状態もかなり酷いと言っていた。
俺は急いで緑谷がいる遺体安置室に向かう。
「轟くんっ!」
「緑谷っ…楓は!?」
「この部屋の中だよ…」
そう言われて通された部屋には顔の原型がないくらい皮膚がボロボロになってアザだらけで見るに耐えない姿の楓
「…楓っ…く、うぅ…何がっ、守るだ…俺はお前に頼って甘えてばっかりで…何も、してやれなかった!すまない…ごめんな楓…何がヒーローだ、お前を傷つけてばかりで何がっ…」
楓の冷たくなった遺体を抱きしめながら泣く俺の背をさする緑谷
その体温を感じて自分が生きてる事がたまらなく悔しかった
病院の看護師さんに出ていくよう言われるまでずっと俺は楓の側にいた。
「……轟くん、戻ろう?もう出ていくよう言われてるしさ」
「………楓」
楓にすがりつく俺を緑谷が引き離し、遺体安置室を後にする。そして、楓が司法解剖に回されてるのをただただ病院の廊下で待っている。
何時間待っただろう?楓の司法解剖が終わって司法解剖を担当した医師が俺に声をかけてきた。
「ヒーローショートですね?彼女の恋人の…」
「……はい」
「少し、お話があります。宜しいですか?」
そう言って医者は空いてる診察室に入る。
「彼女は生前、無個性と診断されていましたか?」
「はい、本人が自分は無個性だと言ってました。」
今更なんだ?楓が死んだ今そんな事聞いたって仕方ないだろなんて心の中で悪態をついていると
「司法解剖の結果、彼女は無個性じゃない事が判明いたしました。」
「………え?」
「彼女の個性は死んだ後に発動する個性です。身体さえ再生させる事ができれば丸一日だけ生き返れる個性だったんです。」
「じゃあ、楓は…あと一日生きる事が出来るんですね!?」