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歪な夢のカケラ【ヒロアカ裏メインの短編集】

第21章 もしも願いが叶うなら…【轟焦凍/切甘裏夢】



雄英を卒業して、俺はとあるヒーロー事務所のサイドキックになった。

今まで職場体験やらインターンやらでプロの仕事を体験することはあったが、実際仕事としてずっと続けていくとあの頃の自分には分からない苦労や過酷さが身にしみる。

そんな毎日の中、俺は最近ある一人の女が気になり始めた。

『お疲れ様です!ショート』

パトロール後の報告書を提出する時に顔を合わせる事務員の高橋楓。

「…あぁ、お疲れ」

『この後19:00から一昨日発売された雑誌関連のイベントでしたよね?』

「……そうだったな」

やべぇ、すっかり忘れてた。

『19:00からだからあと30分しかないです。会場遠いですし急いだ方が良いと思うので私車出しますよ』

「いや、それくらい自分で…」

『ショートはコスチューム着替えてきてください。会場内ドレスコードで来るように言われてますから』

「わかった。」

そう言って俺は事務所の更衣室でドレスコードに着替えて、事務所前で待ってる楓の運転する車に乗り込んだ。

楓はしっかり者で頼りになる。
俺がこの事務所に入った数ヶ月後に事務員として入ってきたが、自分の仕事はもちろん俺のスケジュールも管理してくれていて実質秘書のような存在でもある。

助手席で建物に施されたイルミネーションを見ながらあぁ、今年もそろそろ終わりか…なんて思っていると赤信号で止まった時に楓が携帯で音楽を流し始めた。

「……この曲」

楓が流した曲は俺が事務所に所属してから始めて出したデビュー曲。

『私この曲好きなんです!自分の曲流されるなんて恥ずかしいかも知れませんがどうかお付き合いください』

そう言って微笑んだあと、前を向く。
信号が青に変わり愛車のアクセルをじわじわと踏んで加速する。

小声で歌を口ずさみながら運転する彼女の横顔に見惚れていると

『お手洗いとか大丈夫ですか?』

と聞かれたから大丈夫と答える。

曲の続きを口ずさみ始める彼女の車の中をよく見回してみると、所々に俺の公式グッズが置いてあるのが目に入った。

後部座席にはコスチューム着た俺の抱き枕とぬいぐるみ。
俺がデザインした毛布なんかも置いてあってダッシュボードには俺の影絵ステッカーが貼ってあった。
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