第6章 トロイメライ
翔がピアノの準備をしている間にニノがヒソヒソと話しかけてきた。
「ふふっ、いい感じに育ってるね」
「そうか?」
「あんな風に、独占力丸出しの発言させるなんて
相当可愛がってあげてるんじゃないの?
智の歌聴かせるよりも、独奏を選んだんだから」
「独占力なんて、そんな大層なモノじゃないだろ」
「そう?歌声を『俺だけが聴きたいから』なんてさ
中々言われることなくない?」
「まぁ、初だな。
人前で歌うこと自体しないし」
「よっぽど気に入ったんだろうね、智の歌が。
それとも智が…かな?」
意味ありげに含み笑いをするニノ。
そりゃ俺の手が好きって言うくらいだから、俺のこともある程度は気に入って貰えてるだろうさ。
上手いメシは食わせてやってるしな。
~~♪
翔のピアノが鳴り出すと、ニノも真剣に聴きはじめた。
「うん、いい感じ…
昨日よりも音が優しい。
これならお客様の居るところで弾かせても大丈夫だよ
翔のピアノを弾く姿も綺麗だし、ファンが付くかもね」
「それはそれで面倒臭そうだけど…」
「いいじゃん、店の売上に繋がるんだから。
面倒臭そうな奴がいたら、智が何とかしてあげなよ」
「お前、ほんと人任せだなぁ…」
「別にいいよ?
潤か相葉さんに頼んでも…
あの二人なら、喜んで引き受けてくれそうだし」
「……いいや、それはもっと面倒臭い。
いいよ、俺が見るから」
元々、翔のことを他の人に任せる気はないし
あのふたりに、変にナイト気取りでもされたら嫌だしな。
「さすが、智パパ。
それじゃあ、翔のピアノ演奏は決まりでいいかな?」
「翔が大丈夫ならな」