第6章 トロイメライ
《智サイド》
「どうかした?」
翔が不思議そうに俺の顔を見上げる。
その表情と上目使いの視線に、またドキンとなった。
「いや、何でもない」
「そう?」
それでも怪訝そうに見つめてくる翔の視線から、逃れようと上体を起こした。
「さっ、メシ作るぞ」
「うんっ」
返事をする翔の頭を撫でると、翔も体を起こし、ベッドから降りた。
徐にパジャマを脱ぎ捨て、着替える翔。
いつもの行為なのに、翔の白い背中が顕になると、俺の心臓がまた跳ねた。
その後も、ドキドキとなり続ける煩い心音に耐えきれず
逃げるように部屋を後にした。
心を落ち着かせたくて、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し
グラスに注ぐと一気に飲み干す。
「はぁ~」
なんなんだよ一体…
今までだって散々見てきただろうが。
そもそも、俺にそんな趣味はないはずだし…
なのに、なんでこんなにドキドキしなきゃならないんだ…
相手は男で、二十歳になったばかりの子供だぞ?
……まぁ、そんな翔に、潤さんも相葉さんも惚れたんだけど…
「智?」
「うわっ!」
いつの間にかキッチンに来ていた翔に声を掛けられ
思わず声をあげてしまった。
「どうしたの?やっぱりおかしいよね?今日の智」
「そんなことないって…
急に声を掛けられたから驚いただけだよ」
「そう?智って、いつも冷静だからそんな姿珍しいなって思っちゃった」
自分でも思うよ…こんなにパニクってる俺、珍しいって…
なんだかヤバい予感がする。