第5章 子守唄
空いたテーブル席の片付けに行くと、近くのテーブルでお客様と話していたニノさんが俺のところに来た。
「今、相葉さんと何を話していたの?」
ニノさんが周りに聞こえないように、小さな声で聞いてきた。
「何って、別に…」
「そう?なんか翔が少し困った表情してるように見えたから」
ニノさんって凄い…
他のお客様の相手しながら、俺のことも見てたんだ。
図星を指され黙りこんでしまった俺を見て、ニノさんがふっと微笑んだ。
「翔ってほんと素直なんだね、わかりやすい」
「素直なんかじゃないです…」
「そう?でも今も困ったって顔してるよ?
この店で起きたことは、俺にも責任があるんだから
隠さず話してね?」
そうか…これでもし俺が誰にも言わずに相葉さんと食事に行って
万が一、相葉さんの機嫌を損ねたりしたら…
もう二度とこの店にも来てくれなくなって、大切なお客様を一人無くすことになるんだ。
「あの…」
「ん?なに?」
「俺…相葉さんに食事に誘われました…」
「へぇ~、それで?なんて答えたの?」
「まだ返事はしてません…考えといてくれって…」
「そっか…で?翔はどうしたいの?」
「どうって…相葉さんいい人だから…
折角誘ってくれたのに断るの、申し訳ないなって…
でもプライベートで会って、相葉さんの機嫌損ねたら店にも迷惑掛かりますよね?」
「相葉さんなら大丈夫じゃないかな?
ちょっとやそっとのことでは機嫌悪くなることなさそうだけど」
「そう、ですか…」
ニノさんにそう言って貰っても、まだどうするか悩んでしまう。
「ねぇ…」
「はい?」
「翔が返事を迷ってるのは他に理由があるんじゃないの?」
他の理由?そんなのわからないよ…
でも何かが引っ掛かる。