第11章 家路
玄関に入った途端違和感を感じる。
なんだ?家を出た時と何かが違う。
部屋の中は暗くて見えないし…
なんなんだ?
そして靴を脱ごうとして気がついた。
靴が一足多い…
見慣れないフォーマルシューズ。
まさか…
慌てて靴を脱いで、リビングへ向かったが電気はついてない。
電気のスイッチを押し、部屋の中を見ても人の気配はなく、次に寝室へ向かった。
寝室のドアを開けても、やはり部屋の中は暗くて良く見えない。
壁に付いてる電気のスイッチに、手を伸ばした。
部屋が明るくなると、目に飛び込んできたのはベッドの上の布団の山…
そっと近付き布団を捲ると、しっかりとパジャマに着がえ、俺の枕を抱え眠っている…
「しょ、お…?」
なんで?もうここへは来ないんじゃ…
「んっ…」
短いうめき声をあげ、ゆっくりと瞼が開く。
その目が俺の姿を捉えると、ニコッと嬉しそうに笑った。
「おかえり、智」
「おかえりって…お前、なんで…」
「なんで、ってなに?」
「いや、お前もうここには来ないんじゃ…」
「なんで?ここ、俺の家でしょ?
帰ってくるの当たり前じゃん」
「でも、今日のコンクール…」
「あっ!智、結果聞かないで帰ったでしょ?
俺、せっかく優勝したのに」
「だろうな…」
「だろうな…じゃなくて、『おめでとう』は?」
「あぁ、おめでとう…」
「なんか心がこもってないんですけど」
膨れっ面をする翔。
「いや、ごめん…なんか混乱してて…」
「なにが混乱?俺がここにいるのがそんなにおかしいの?」
「う、ん…」