第10章 別れの曲
「翔くんのピアノ、益々腕があがってるんじゃない?」
相葉さんが、翔の演奏する姿を、嬉しそうに眺めながらグラスに口をつけた。
「ありがとうございます」
ニノがニコッと笑うと、相葉さんが俺の方をチラッと見た。
「大野さんのお陰なのがなぁ…
ちょっと悔しいけど」
「俺のお陰じゃないですよ、翔の努力の賜物です」
「またまたぁ、翔くんがリクエスト受けないのって、大野さんの為に弾いてるからなんでしょ?
マスターがそう言ってましたよ?」
「えぇ、まぁ…そうみたいですけど…」
「あ~、いいなぁ…あんな可愛い子が恋人なんて。
俺も欲しい~」
「相葉さんだっておモテになるでしょ?
すぐに恋人の一人や二人見つかるんじゃないですか?」
「あー!もうヤダヤダ。
自分は可愛い恋人がいるからそんなこと言えるんですよ。
実際、あんな子そうそう見つかるもんじゃないんですよ?わかってます?」
「すみません…」
確かに、翔以上に可愛いヤツを探せと言われても、すぐには見つからないだろうなぁ。
「ま、しょうがないですけどね…
翔くんが選んだんだから。
でも不幸にしたら俺が貰っちゃいますよ?
だから大切にしてあげてくださいね?」
優しい微笑みを浮かべる相葉さん。
心からそう言ってくれてるのがわかる。
やっぱりいい人なんだよな…
それでも翔を渡すことなんて出来ないんだけどね。
だったら俺は俺が出来ることをするのみ。
「はい、もちろん。大切にします」
相葉さんは『うんうん』と満足そうに頷いた。