第9章 愛の夢
翔をしっかりと腕の中に抱きしめたくて、躰を起こし翔の躰も抱き起こした。
「あ、んっっ…」
結合部分が深くなり、翔の背中が仰け反る。
その躰を抱き寄せると、翔も俺の首に腕を回し抱きついてきた。
暫くそのまま抱き合っていると、翔の可愛い声が耳元で聞こえた。
「さ、とし…」
「ん?」
「俺、ずっとここに居ていい?」
不安そうな翔の声…
肩を掴み、少し躰を離し翔の顔を覗きこむと瞳が潤んでいた。
「居ていいに決まってるだろ?
出ていく理由なんかないんだから。
なんでそんなこと聞くんだよ」
両想いになれた今、いったい何が不安なんだ?
「智と出逢ってからね、俺は好きなモノが次々と増えていって、幸せを知ることが出来た…
でも、それって全部智が与えてくれたモノなんだよね。
智がいなくなったら、俺はきっとまた元の俺に戻っちゃう…」
幸せを知ることが出来たからこその不安か…
「そんなことないだろ。
ここに来てお前は変わったよ。色んな経験がお前を変えたんだ。
俺と一緒にいるからだけじゃなくて、ニノや潤さんや店に来るお客さんと交流を持ってお前は成長した。
だから、俺がいなくなっても、お前は元のお前には戻らないよ」
「でも…」
それでも不安の表情を浮かべる翔に微笑んだ。
「だからと言って、俺がお前を離すつもりもないんだけどな。
さっきも言っただろ?
お前はいつまでもここに…俺の傍にいていいんだよ」
翔の髪を梳きながらそう言うと、漸く翔の顔に笑顔が戻り、俺に抱きついてきた。
「うん…ありがとう、智…」