第9章 愛の夢
智の唇が何度も俺の唇を包むようにキスをしてくる。
そのキスは優しくて、温かくて…智そのものを表すキス。
ずっとしていて貰いたいと思ったんだけど、でも呼吸が出来なくて、思わず智の肩を押し返してしまった。
大きく息を吸い酸素を取り込む。
「く、るし…」
智が驚いたように俺を見つめた。
「は?なに?お前、息止めてたの?」
止めてたの?って言われても呼吸出来なくしてたのは智じゃん。
「だって、ずっと口塞がれてるんだもん」
「いやいや、タイミングみて呼吸出来んだろ?
今までどうしてたんだよ」
「…今までしたことないし」
そう言うと智は更に驚いた。
潤とは体の関係はあったけど、一度もキスはしたことなかった。
それに関して俺は何の不思議も感じなかったし、そういうもんなのかな?くらいにしか思ってなかった。
「じゃあ、もしかして、さっき外でしたのが翔のファーストキス?」
智が恐る恐る聞いてきた。頷くと智に謝られた。
「なんかごめん…」
なんで謝るんだろ?
ファーストキスの相手が、智で良かったって思ってたのに。
「いや、ムードもなんも無しでいきなりしちゃったから…」
でもそのキスのお陰で、智の気持ちわかったんだから
俺にしてみれば何の問題もないファーストキスだったんだけどな…
そう言うと智の目が変わった。
「でもな、最高のキスはあんなもんじゃないから」
智の手が頬に添えられたかと思ったら、顎に置かれた親指に力が入り
少しだけ開いた唇をこじ開けるように、智の舌が侵入してきた。