第8章 カノン
「実際上手くいってるもんね、あの店」
「ありがたいことにな。
まぁ潤さんのお陰でもあるんだろうけど」
「なんで?潤はあの店の経営には関わってないんじゃないの?」
「直接的には関わってないけど
潤さんの紹介で来るお客さん、結構いるんだよ」
「そうだったんだ…」
「一度来て貰えれば、後は俺とニノの腕でリピーターになって貰えるし」
ニヤッと笑う智も、自信に満ちてて格好いい…
ダメだ…今の俺はどんな智を見ても、格好いいと思ってしまう…
どんどん智に嵌まってく。
「翔?どうした?ボーッとして」
「えっ…」
俺、智のことをボーッと見つめてた…恥ずかしい。
「あ、ううん、なんでもないっ…
ねぇ、そろそろお昼ご飯にしよ?
俺、お腹すいた」
誤魔化すように話を逸らした。
「お?もうそんな時間か。
とりあえず翔の使ってた布団は、クローゼットに仕舞っておくか」
「うん」
智とふたりで布団を仕舞い
世間的にはおやつの時間に、昼食の準備に取りかかる俺たち。
この食事が俺たちが一日のうちで、一番しっかりと摂る食事になる。
だから調理時間も一番掛かるんだけど
俺も智の手伝いが出来るようになったから
前よりは早く作れるようになった。
「翔のお陰で、だいぶ時短出来るようになったよなぁ」
「ほんと?俺、智の役に立ててる?」
智の顔を見ながら聞くと優しく微笑んでくれる。
「おう、十分立ててるよ」
「やったね」
喜ぶ俺を、更に優しい笑顔で見つめてくれる。
その笑顔を見るだけで益々嬉しくなる。
もっともっと、智の役に立てるようになりたい…
そしてずっと…その優しい笑顔を見続けたい。