第3章 雇い主
「君が望月先生の言ってた子?」
そう言いながら傍へとやって来たのは…
Re:valeの小さい方の人…!
とは言っても俺より背は高い。
テレビでよく見るのに名前が思い出せない。
「あー…今声が出ないんだっけ?大丈夫?」
キョトンとしながら立ち尽くす俺に声をかけながら顔を覗き込もうと近付いた時だった。
あの匂いがした。
…!…壮五さんに似てるけどまた少し違うΩの匂い…。
でもこの人には多分番がいる。
なんとなくだけど俺にはそういうのが分かるしそれは高確率で当たる。
「ここで話すのもなんだし楽屋においでよ!暖房も効いてて暖かいよ!」
そう言うと来客者と書かれた入場カードを手渡され首にかけると俺の手を掴み自分達の楽屋へと案内される。
その途中も絶えず話しかけてくるが状況を理解出来てない上にさっきからちょっと息苦しい気が…。
はぁ…っ…はぁっ……っぅ…
上手く息が出来な……意識が……
「朔哉…?」
色んな匂いが混ざって気持ち悪ぃ…
荒く息をしながらその場に座り込んでしまう。
「大丈夫!?」
慌てる声が聞こえる。
意識が朦朧とする中また匂いが増えて来て噎せ込んでしまう。
近寄るな!と威嚇してぇけど、そんな気力さえ今の俺にはなくて体温が呼吸が全てが上がって行くのがただ苦しくて……
俺の意識はそこで途切れた。