第34章 狐と蛇(明智光秀)
そして今、
光秀は娘のいる神社に、
時折足を延ばしていた。
諦めろとは言われたが、
諦めると言ったわけではない。
元来しつこい性分だ。
娘が嫌がり音をあげるまでは、
通うことをやめる気はなかった。
何よりあの出会いで、
娘の正体と、いる場所を教えた、
あいつ自身の落ち度だ。
自分はただ自分の欲に従っているだけだ。
光秀はそんなことを思いながら、
娘のもとに今日も会いに来ていた。
忍「・・・大体一刻ならいざ知らず、
全てくれってのが贅沢なのよ」
光秀の土産物を貪りながら、
忍はそういう。
今日のは政宗に作らせた団子だった。
先日天下統一飯を置いたら、
怒った忍が城に現れて、
城を破壊されるかと思ったので、
以来忍への土産は、
ほかの人間が担当している。
光秀はせいぜい賽銭を、
“彼女の家”に落とすぐらいだ。