第30章 女城主の決断(信玄編)
忍「・・・っ」
信玄「どうした?」
忍「このような場所に来るのは初めてで・・・」
信玄との見慣れない場所での逢瀬に、
忍は落ち着かないようだった。
信玄はそんな彼女を見て、
ふいに言葉を紡ぐ。
信玄「姫」
忍「?」
信玄「一日言うことを聞くといったな?」
忍「それが何・・・」
忍が信玄に聞く前に、
信玄は忍の唇をかすめ取っていた。
部屋に信玄と忍の口づけの音が響く。
信玄は忍の小さな身体を抱きしめる。
忍の手も信玄の広い背中に回っていく。
やがて二人は唇と離すと、
唾液が糸となって二人をつないでいた。
忍「なんで・・・」
信玄「麗しの姫の唇がほしくなった」
忍「信玄殿・・・唇がその・・・」
信玄「唇?」
信玄は忍の言葉に指で唇をぬぐう。
信玄「ああ、姫に贈った紅をとってしまったな」
信玄はあの時着物だけでなく紅や簪といった、
一通りのものをそろえさせていた。
その紅が口づけの時信玄の唇についてしまったようだ。