第28章 女城主の決断(顕如編)
交わりが終わると、
忍は元の人形へと変わる。
信長に本願寺を焼かれた自分が鬼になり、
今度は彼女の国と民を焼いたことで、
彼女から感情や愛を奪ってしまったのだと、
交わりの後、顕如はいつも自責の念にかられていた。
国を焼かれる前、仮初の同盟のおり、
泣くのを懸命にこらえながらも
自分に縋り付き、懇願する・・・
そんなあのときの忍の姿を、
今でも顕如は夢で見る。
もしあの時、彼女の懇願を聞いていたら、
最初から女子であることに気づけていたのなら、
この弱くてもろい娘を、
ここまで病ますことなどなかったのにと・・・
信長への復讐心は今も、
顕如の中で強くくすぶっている。
だがそれ以上に顕如には、
忍の笑顔はどのようなものだろうと、
そんな思いが芽吹いていた。