第21章 扇月の夜(今川義元)
その夜
忍「あの夜分失礼します。
義元様いらっしゃるでしょうか?」
義元「いるよ。・・・本当に来たんだ」
寝衣姿の義元と忍は向かい合って座る。
忍「その約束ですから・・・」
義元「そんなに震えているのにかい?」
忍「こ・・・これは武者震いで・・・」
義元「嘘をつくのはよくないな・・・
本当は怖い・・・んだよね?」
忍「・・・・・・はい」
義元「やっぱり謙信には俺が言っておくよ」
忍「そ・・・それはだめです」
腰をあげかけた義元を、
忍は止める。
義元「なぜ?軒猿以外の方法はないか聞くだけなのに」
忍「じ・・・自分には、
この方法しかありませんから」
義元「でも軒猿というか忍びになったら、
そういう経験いるのは、
分かっているよね?」
義元は忍にそう問う。
謙信がどういうつもりで、
彼女を軒猿にしたのかは知らないが、
女であることを理由にしたのなら、
おそらくそういう使い方まで、
謙信は想定しているはずだと・・・