第17章 鬼虎演舞(顕如&武田信玄)
信玄「至極まじめだ。
姫、いくら払えば、
俺と褥をともにしてくれるのかな?」
忍「はい?」
信玄「一晩だけでかまわない。
いくらで売ってくれる?
そうだ。一晩身体を貸してくれたら
しばらく安土には、
手を出さないというのはどうだ?」
忍「それは無理でしょう?」
信玄「なぜそう思う?」
忍「だって仮に虎がおとなしくしたところで、
あなたのところの龍までは、
おとなしくはしないでしょう?」
その言葉に信玄は呆けた顔をしたのち笑った。
信玄「これは、これは一本取られたな。
たしかにあの戦狂いにおとなしくは無理だ。
なら香でも、反物でもなんでも、
貢物をするというのはどうだ?」
忍「それも遠慮しておきます」
信玄「なぜ?俺が信長の敵だからか?」
忍「それならそもそもこうなっていません。
私のほしいものは、
あなたでは与えられないからです」
信玄「ふ・・・そうかそうか・・・
ならこれはどうだ。
俺が信長をうった際には、
君の首をそこの男に捧げるというのは?」
忍「どうせなら兄を倒した際には、
私を生きたまま顕如に捧げるほうがいいわ。
私の首を打ち取るのは、
顕如以外考えられないもの」
信玄「前言撤回しよう。
やはり君は鬼のような姫君だ・・・」
忍の焔を宿したような赤い瞳に、
まっすぐ見つめられた信玄はそうつぶやく。