第14章 軍師片思い(石田三成)
ある日、三成は自分の眼で見てしまった。
主君である秀吉と舞の逢瀬を、
そして秀吉の部屋から聞こえる思い人の甘い声を・・
心の片隅で否定したかった現実を、
実際に突き付けられたかのようで、
三成の歯車はさらに壊れていった。
その壊れをごまかすように、
三成はさらに読書に没頭するようになった。
舞には忍という双子の妹がいた。
顔がそっくりの双子の片割れ。
性格は姉に比べるとおとなしいが、
よく似ていると三成は思う。
でも秀吉も自分も好きになったのは同じ姉の方だ。
顔だけなら姉でも妹でも変わらないから、
秀吉ならかまわないだろうに、
なぜ自分と同じ人を好きになったんだと、
怒りや憎しみがこみあげてくるような気分に、
普段なら没頭できる読書もままならなかった。