第14章 軍師片思い(石田三成)
三成は一人の女性に恋焦がれていた。
舞という女性。
彼女の笑顔を見るたびに彼の心は、
炎がともるようなそんな気持ちだった。
そんな彼の歯車が狂い始めたのは、
その舞が自身の主君である豊臣秀吉と、
男女の仲になり始めたという噂を聞いてからだ。
織田信長という絶対的な立場の者なら、
諦めることもできただろう。
自分より下の人間や敵国の人間とそうなったのなら、
いっそ自分の気持ちを伝えることもできただろう。
三成にとって何よりの不幸だったのは、
主君の吉報に喜ぶ心と、
大事な思い人を取られたという悲しみという、
二律背反の気持ちのどちらも選べなかったことであった。